仕事を探していた私は、ハローワークの紹介窓口の担当者から、求人募集をした会社の担当者に電話をかけてもらいました。面接の日程を聞くためにです。

私が窓口に持っていった求人票は、販売事務職の募集でした。

求人募集をした会社の担当者の希望で、私はその担当者と電話でじかに話をすることになりました。

私がその会社を選んだ理由は、販売事務職であったことが第一ですが、次の理由が、週休二日であることでした。

担当者に聞かれました。

「どの募集ですか?」

私は答えました。

「販売事務です」

「・・・・・・、店の?」

 なんとなく、頼りない男性でした。

「そうだと思いますが」

店の販売事務なのか、事務所の販売事務なのか、求人票には記載がなかったので、聞かれても答えられません。

相手の担当者は、しばらく考えていましたが、

「その募集は、私の担当ではなく、店の担当になります」

 と言われても、求人票には、店の電話番号は掲載されていません。

この時点で、すでにちぐはぐなやりとりでした。

数時間後、その日はたまたま、近くの店舗に社長が来ているとのことでしたので、社長じきじきの面接を受けるために、私はその店舗へ行きました。

「宜しくお願い致します」と言ったすぐそのあとに、私は念のために、絶対条件である週休二日を確認するために、言いました。

「週休二日とありましたので、応募させて頂きました」

「週に二日も休む? あなた、根性がなってないな。いくつだね? 45? 週に二日も休みたいなんていうのは、ナマクラな人間のいうことだ」

軽蔑したような口調で、言い放たれました。

「私も、働いているだけでいいのなら、週に6日でも働きます。家の雑用があって6日働けないから、週休二日を探しているのです」

思わず、反抗しました。

「うちはねえ、商品を作るのに、中国の娘たちを雇っているんだ。あの娘たちはねえ、夜中の12時まででも、それ以上でも、働くんだ。あなたみたいなナマクラな日本人を雇わなくいても、構わないんだがね。ちょっとは、中国の娘を見習ったらどうだ、と言いたいね」

「12時までって、何時からですか?」

「朝の8時からだよ。一週間、休みなしの週もある」

『それ、労働基準法違反でしょう。それとも中国の会社に席があるのなら、中国の法律が適用になって、日本の法律は関係ないのだったかしら?』

私は呆れましたが、落ち行いて、持って来た求人票を、社長に提示しました。

「ここにほら、週休二日、と書かれています」

社長は求人票を、チラと一瞥しましたが、

「あなた、週に二日も休んで、いったいなにをしてるんだね? うちはねえ、一番できる営業社員で、月に300万、持って帰るんだ。週に二日も休んでいたら、300万はもらえんぞ」

「私は、16万でいいんです」

私は、バッグからボールペンを取り出して、持って来た求人票の給与が書かれたところを、なぞりました。

社長は、見ようともしません。週に一日の休みも取らないで働く営業社員のことを、自慢そうに褒めるばかりです。

「みんな、仕事が好きだ。営業から帰ってきたら、見積もりだ。夜中ごろまで、仕事をしている」

『それこそ、労基法違反だわ』

「私は16万でいいんです」

「ナマクラな根性だ。叩きなおしてやらないと、ならんな」

「販売事務の募集を見て、来ました」

私は、もう一度、求人票を提示しました。

「販売事務? うちにはそんな事務員はいない。みんなが、営業社員だ。みんな、少しでも多くの金をもらえるように、夜遅くまで、頑張っている。休みたいなどと言うような、ナマクラは、いない」

ワンマン社長ですが、私の言うことをまったく無視する態度は、まるでボケ老人でした。

私は、一人で話す社長の言葉をさえぎって、席を立ちました。

翌日、私はハローワークへ行って、面接の一部始終を報告しました。

「指導を、いれます」

窓口の担当者は、私に言いました。

あの求人票は、いったいなんだったのでしょう? 

面接に行った、時間と交通費を返して頂きたいです。