私は、派遣社員で3ヶ所、出向で1ヶ所、勤めた経験があります。

派遣の3ヶ所については、最初に派遣されたのは、派遣会社と同じグループ内の会社でした。三人で派遣されました。

同じグループ内ということで、とても働きやすく、派遣先の会社の人との人間関係も良好でした。

また三人で派遣されたということで、精神的にも安心して勤めることができました。

ここでは、契約通りに、三ヵ月、勤めました。

次に派遣されたのは、日本でトップか二位といわれる自動車メーカーの地方都市にある本社の総務部でした。たとえばそれが神奈川県だとすれば、「神奈川○○○本社総務部」です。

その総務部は、3社の派遣会社から、それぞれ一人ずつの派遣社員を雇っていました。

私たち三人は、隣り合わせに並んで席を与えられて、主に入力の仕事をしていました。そして社長が、時々社長室から出てきて、総務部の一画にあるデスクにお尻をもたれかけて、三人の仕事ぶりを比べていました。

私たちは、社長の厳しい目を感じながら、ピリピリして仕事を勤めました。

正社員のOLたちのうち何人かは、私たち派遣社員のことが、よほど気に入らないらしくて、直接嫌がらせをしないかわりに、退職してしまいました。

周囲のそういう雰囲気も、肌で伝わってきて、毎日が大変な緊張の連続でした。

私は、半年の契約で派遣されていましたが、三ヶ月ほどで仕事量が減ってしまい、早退しなければいけない日が続きました。

それでは困るので、派遣会社に相談すると、今度はまた同じグループ内の会社へ、長期で派遣されました。

派遣社員の最長派遣期間は三年でした。

私は、その会社の総務部へ、三年という契約で派遣されました。

私が派遣されたその支社には、四百人あまりの社員が、働いていました。

グループ内の会社は、前に派遣された会社と同じような雰囲気で、とても働きやすかったのですが、やはりひとりぼっちというのは、なにかにつけて辛いものがありました。

たとえば、別の支社の社員が、ケーキを手土産に持って来てくれたとします。

私だけが、もらえません。

なぜなら私は派遣ですから、派遣先の社員のように、業務時間中に食べるわけにはいきませんし、派遣先の社員は、自分たちが総務の「お客様の窓口」のような席に座るのが嫌だから、派遣社員を雇って、好きな時に食べて、好きな時にコーヒーを飲むという、気ままな就業態度をしているのですから。
しかし派遣先の社員も、さすがに体裁上は私に気を遣って、コソコソと別の部屋へ行って、隠れるようにして食べています。

気まずいものでした。

そういうことが、けっこう頻繁にありました。

そのうちに、社員の人たちがひそひそ話をしていたりすると、私のことを噂しているのかと、被害妄想に陥ることもありました。

私は、長期で受けたことを、後悔しました。二度と、長期の派遣は受けまいと。

そうして三年が過ぎ、私は契約を終えて、別の会社に入社しました。

後任で派遣された彼女は、引き継ぎの時に私に言いました。「ここへは、来たくなかったのですけど」と。派遣社員は派遣社員で、口コミでその派遣先のことを知っていたのでした。ということは、私だけが、そんな嫌な思いをしたわけではなかったのです。

別の会社に入った私は、今度は出向になりました。

出向先は、非営利目的の財団法人でした。

仕事は、そこでの入力業務でした。

その出向先の正職員とアルバイトの職員は、ひとつきの残業時間が100時間近くありました。そのことで労働基準監督署から指導を受けていましたので、解決策として、私が出向させられていた会社から、次々と出向者の人数を増やしました。

 私たちの仕事は入力ですが、正職員とアルバイトの職員の仕事は、その財団法人独自のスキルが必要でした。でも傍目に見ていると、業務時間中はほとんど、おしゃべりばかりしていました。

私たちの仕事の量はそれまでと同じなのに、出向の人数を増やした結果、私たちの仕事は減り、どれだけゆっくりと仕事をしても、就業時間中の仕事量には足りなくなりました。

私たちは、毎日、早退しました。

それではやっていけませんので、私は上司に訴えました。

会社は、「もう少し我慢して待ってくれたら、就業時間を元通りに戻す」というばかりで、現実には、なにも変わりませんでした。

同僚たちは私に、「胡散臭い会社だから、一日も早く、辞めたほうがいいわよ。水増し請求をしているにちがいないわ」と言って、退職してゆきました。
まだしばらく退職しないで続けていた私は、勤務中に、熱中症にかかってしまいました。

私が入力業務をするパソコンは、四台の印刷機の吹き出し口の前にありました。印刷機は、印刷会社にあるような本格的なものです。

職場はクールビズで、毎日扇風機をかけても、暑くて暑くて堪りませんでした。なにがって、財団法人の職員たちは、私服ですから、首元の広く開いたシャツを着れば、少しは暑さもしのげますが、私たち出向社員は、サマーウールのベストとスカートの下に、ポリエステルのブラウスです。体から発散される熱が、逃げるところがありません。

ある日、私はついに、モニターを見ようとすると、ものすごい吐き気に襲われました。 財団法人の職員たちは、自分の方に扇風機を向けて、私たち出向社員の方には向けてくれません。というよりも、みんな暑いので、人のことなどかまっていられないのだと思います。

『こんな地獄のような暑いところに、いられるもんですか!』

私は、這うようにして、ビルの外に出ました。

それから数日後、私は退職しました。

さすがにここへ書くことは控えますが、あまりにも・・・・・・腹に据えかねましたので。

派遣も出向も、派遣先や出向先次第で、良い所もあれば、その反対もあります。一概にどうとはいえませんが、最初の約束と話が違ってくることも、私の場合には四度のうち二度ありました。

かなり不安定な就業形態であることは、確かだと思います。

その不安定料が、「パートより高い時給だ」というのなら、「派遣会社がはねている上前を、もっと派遣社員に回して下さい」と言いたいです。